ローマ人の物語 パクス・ロマーナ(上・中・下)
ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上)塩野 七生(著)
新潮社 (2004-10)
¥ 420
ISBN:978-4101181646
ローマ人の物語〈15〉パクス・ロマーナ(中)
塩野 七生(著)
新潮社 (2004-10)
¥ 420
ISBN:978-4101181653
ローマ人の物語〈16〉パクス・ロマーナ(下)
塩野 七生(著)
新潮社 (2004-10)
¥ 380
ISBN:978-4101181660
初代ローマ皇帝アウグストゥスの統治のうまさを描いた読み物。 カエサルのように性急ではなく、ゆっくりと着実に、そして反感を買わぬように権力を掌握していく様子がわかる。塩野氏はアウグストゥスを非常に高く評価しているようだ。
中に通貨改革と題された一節があり、アウグストゥスの貨幣改革の内容が極簡単にまとめられている。(括弧内は私の感想)
- 1アウレウス金貨=25デナリウス銀貨=100セステルティウス銅貨 という、金・銀・銅の三通貨間の、実に単純明快な関係。
(セステルティウスより小額の銅貨の部分が必ずしも単純でないのは無視しているようだ。) - 額面価値と素材価値の一致。
(金貨、銀貨については間違いないだろうが、銅貨については違うのではないだろうか?) - これらの通貨は、あくまでもローマ帝国の基軸通貨であって、帝国全体の共通通貨ではなかった。
(これはその通り。) - アウグストゥスは、記念貨にかぎらず通貨にも、自分の横顔や自分に関係した事柄を彫らせたカエサルのやり方を踏襲した。
(ブルートゥスやアントニウスも同様。) - これ以前は銀貨の名称であったセステルティウスを、アウグストゥスは、最も使用頻度の高い銅貨の名称に変えた。
(セステルティウス銀貨の存在を知っているとは塩野氏はよく調べている。しかし、アウグストゥスよりも早く、マルクス・アントニウスが銅貨のセステルティウスを発行した先例があり、「アウグストゥスが銅貨の名称に変えた。」とは言い難いと思う。) - (アウグストゥスの通貨制度は)制度としては紀元4世紀までの300年間つづく。
(3世紀には制度は崩壊してしまい、3世紀末にディオクレティアヌスが改革を行っている。) - アッシス
(なぜ、アスだけ複数形で記述しているのだろう。アウレウス、デナリウス、セステルティウスなど他は皆単数形で記述している。)
基本的には小説あるいは物語なので、書いてあることをそのまま信用せず、事実かどうかは別の本も調べるのが良いだろう。
投稿者 augustus : 13:48 | コメント (0) | トラックバック
ローマ人の物語 (20) 悪名高き皇帝たち[四]
ローマ人の物語 (20) 悪名高き皇帝たち[四]塩野 七生(著)
新潮社 (2005-08)
¥ 460
ISBN:978-4101181707
おそらく全ローマ皇帝の中で最も有名なネロを扱った分冊。
ローマの大火の後、キリスト教徒を処刑したことからキリスト教会から憎まれ、その後2000年間悪名が轟いているのがネロである。義理の弟や実母を殺させたりするなどの悪行も弁解はできない。歌手としてステージに立ったり、首都を放っておいてギリシャに巡業に出かけたりといった為政者に相応しくない行為もあった。
著者はネロに同情的なようだ。母殺しもやむを得なかったように書くし、ローマの大火の後、ドムス・アウレアの建築を始めたのもネロ個人のためだけでなく、市民のためのものであったと説く。しかし、大ローマ帝国を統治するには、少々甘い判断力しか持っていなかったようだ。結局、ネロは見捨てられ自殺することになる。
巻末には詳細な年表があり、ティベリウスが皇帝の後継者になってからネロの死までが書かれている。
投稿者 augustus : 11:01 | コメント (0) | トラックバック
ローマ人の物語 (19) 悪名高き皇帝たち[三]
ローマ人の物語 (19) 悪名高き皇帝たち[三]塩野 七生(著)
新潮社 (2005-08)
¥ 420
ISBN:978-4101181691
「悪名高き皇帝たち」の第3分冊。第4代皇帝クラウディウスを扱っている。
クラウディウスは悪妻たち解放奴隷たちの言いなりになっていた皇帝というイメージもあるが、著者はオスティアの港湾工事や元老院議員の資格をガリア人にまで広げたことなどを高く評価し、解放奴隷の重用にも理解を示している。
クラウディウスの最大の弱点であろう悪妻の言いなりになりがちだった点はスエトニウスやタキトゥスなど古代の人と著者の意見は一致しているようだ。しかし、悪妻メッサリーナやアグリッピーナの醜聞についてはあまり詳しく書かれていない。アグリッピーナによるクラウディウスの毒殺についても極あっさりとした記述で済ませている。きっと著者はクラウディウスの悪妻たちについての有名すぎる逸話は書く気にならなかったのだろう。クラウディウスに興味を持ったなら、スエトニウスなど他の本も読んでみて欲しい。
投稿者 augustus : 21:04 | コメント (0) | トラックバック
ローマ人の物語(17),(18) 悪名高き皇帝たち[一],[二]
ローマ人の物語 (17) 悪名高き皇帝たち[一]塩野 七生(著)
新潮社 (2005-08)
¥ 460
ISBN:978-4101181677
ローマ人の物語 (18) 悪名高き皇帝たち[二]
塩野 七生(著)
新潮社 (2005-08)
¥ 420
ISBN:978-4101181684
[一」と[二]の前半は第二代皇帝ティベリウスを扱っている。
ティベリウスは偽善的、陰気だと言われ、タキトゥスやスエトニウスが書き残した元老院との確執、晩年の性的スキャンダルもあり、評判が良いとは言えない。しかし、著者はティベリウスを本音で生きようとした「冷徹なプロフェッショナル」として好意的に描く。アウグストゥスが築いたローマ皇帝という地位を確固たるものにしてリレーした地味だけど有能な皇帝がティベリウスだと言うのには賛成だ。
[二]の後半は古来から狂気の皇帝と言われるカリグラだ。スキャンダルに事欠かない皇帝だが、著者は彼をモンスターでもなく頭も悪くなかったと評する。愛馬を執政官にしようとした有名なエピソードも著者によれば元老院を馬鹿にしたちょっとした冗談だったとされる。実際どうなのかはわからないが面白い見方であることは間違いない。
「ローマ人の物語」は歴史小説と歴史の解説の中間的なものを狙っているように思う。読んでいて面白く、記述も詳しいが、基本的には小説であり、内容は他の資料にもあたってチェックする必要があるだろう。