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古代ローマを知る事典

古代ローマを知る事典
長谷川 岳男(著), 樋脇 博敏(著)
東京堂出版 (2004-09)
¥ 2,940
ISBN:978-4490106480

「3日でわかるローマ帝国」がローマが発展した理由、大帝国を維持できた理由にスポットを当てているのに対し、「古代ローマを知る事典」はローマ人の生活に大きな焦点が当てられている。

第1章では史料の分析の仕方について説明している。同時代の人の著作だからといって書いてあることをそのまま信じるわけにはいかない。書いた人の立場によるフィルターがかかっている場合も多いし、何度も繰り返し写本が作られていくうちに写し間違いだって起きるのだ。この章は短いが、私を含めて歴史を専門に学習したわけではない人々にはとてもためになる内容を含んでいる。

第2章、第3章では主に制度的な事が取り扱われている。第4章は通史、第5章はローマが大帝国になった理由を考察している。

第6章から第8章までで、人口、寿命、ライフサイクルを取り扱っている。この3つの章が最も面白い。
共和政ローマでは戸口調査が行われていたが、共和政末期には定期的には行われなくなってしまい、アウグストゥスが復活させたが、定着しなかった。だから、人口を調べるのも容易なことではないのだ。
寿命については、エジプトに残っている戸口調査の記録、「ウルピアヌスの生命表」と呼ばれる法史料、墓碑銘、発掘された骨などから推測するようなのだが、これもなかなか大変なことだ。その推測によると、ローマ人は生まれて1年以内に3割以上が死亡し、5歳の誕生日を迎えることができるのは半分くらいしかいないのだそうだ。

第9章ではローマの経済について書いている。 特に興味深かったのは、グリーンランドの氷の層に含まれる鉛や銅の量を時代毎に測定したグラフだ。ローマ時代はかなりの量の金属成分が検出されるが、それを越えるレベルになるのは、産業革命の頃になってからなのだそうだ。ローマ時代に鉱業が盛んであったことがとてもよくわかる。

この本は結論だけを書かずに専門外の人にもわかるように推論の理由を説明してくれている。歴史の学び方を示唆してくれているようで、実に素晴らしい本である。

投稿者 augustus : 2005年07月09日 19:01

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古代ローマ (ローマ帝国の歴史とコイン)
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