アグリッピーナ(小)
Denarius
18.5mm, 3.38g
AD50 , Rome
表:クラウディウス 裏:アグリッピーナ
アグリッピーナ(小)は
ゲルマニクス
とアグリッピーナ(大)の娘として15年に生まれる。父方はリウィア、
アントニウス
に繋がり、母方は
アウグストゥス
、
アグリッパ
に繋がっているという超一流の血筋。また、父の
ゲルマニクス
は将来の皇帝とみなされていた人であった。
19年に
ゲルマニクス
が病没してから一家は不遇になり、セイヤヌスの陰謀で29年から30年にかけて母や兄たちが相次いで流刑、投獄され、その後獄死してしまう。
結婚前には兄
カリグラ
との近親相姦があったと言われている。28年に結婚し、37年には後の皇帝
ネロ
を生む。
39年に夫が病没。同年、
カリグラ
帝への反逆罪でポンティア島に流刑になる。
41年に
カリグラ
が殺害され、叔父
クラウディウス
が即位すると、アグリッピーナは釈放される。
49年に
クラウディウス
と結婚し皇后となる。50年には息子ネロをクラウディウスの養子にさせ、52年には息子
ネロ
と
クラウディウス
の娘オクタウィアが結婚する。
そして、54年に
クラウディウス
を毒殺し、ネロを帝位につけることに成功する。
ネロ
を傀儡として自らが権力を握るつもりだったのだが、
ネロ
はセネカなどを補佐役として母から自立し言うことを聞かない。母子相姦によって
ネロ
を支配しようとしたとの説もある。
59年、
ネロ
の刺客によって殺される。
ネロ
は死んだ母を見て「俺はこんな美しい母親を持っていたとは知らなかった。」と言ったという。
アグリッピーナは稀代の悪女と言われている。確かに悪女の名に恥じない行いではあるが、権力にあまりに近すぎて命の危険におびえる毎日を送ってきた彼女には同情の余地もある。息子の安全のために息子を最高権力者にさせようというのは理解可能である。それで満足できれば平穏な老後を送れたのかもしれないが、最高権力者となった息子
ネロ
を支配し続けようとしたところにアグリッピーナ最後の悲劇の原因があったと言えるかもしれない。
古代ローマ (ローマ帝国の歴史とコイン)