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ローマ史のなかのクリスマス―異教世界とキリスト教〈1〉
ローマ史のなかのクリスマス―異教世界とキリスト教〈1〉保坂 高殿(著)
教文館 (2005-10)
¥ 2,625
ISBN:978-4764265875
本書はクリスマスの起源を明らかにすることを目指して書かれている。クリスマスは4世紀初頭に不敗の太陽神の祝祭から借用されたものという説明が以前から為されてきていたが、それだけだと、なぜ4世紀初頭になって初めてクリスマスがキリスト教会に導入されたのかが不自然である。本書はそういう問題も含めてなるべく多くの資料を引用しながらわかりやすく説明してくれる。
古代ローマの多くのキリスト教徒は、キリスト教に改宗した後もそれまでの多神教的生き方を変えたわけではなかった。現世的利益を願って異教の神を拝し、異教の祝祭に喜んで参加する人たちであった。異教の祝祭へ行って教会へ来なくなる多くの信徒をどうするかが教会指導者には大問題であり、その解決策として渋々導入されたのがクリスマスをはじめとするキリスト教の祝祭であったらしい。
クリスマスは当時盛んだった太陽神の祝祭から信徒を取り戻すためものであった。だから太陽が復活する冬至の頃に行われる。信徒にもキリストを「真の太陽」とか「新しい太陽」と説明して、異教的祝祭からキリスト教的祝祭へと導いたのであった。
こういう説明はきっぱりと異教に決別した信仰心篤いキリスト教徒をイメージすると大きな違和感があるが、多神教的枠組みの中に生きておりなおかつ普段はそれすらも意識しない我々多くの日本人には納得しやすいもののように思う。当時のローマ帝国のキリスト教徒もきっとよく似た感じ方をする人たちだったのだろう。
投稿者 augustus : 2005年11月27日 12:40
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